スタートアップのためのTLD選び——最初の住所が未来を決める
スタートアップが最初に直面する選択のひとつが、ドメインの取得である。プロダクト名が決まった瞬間、創業者はドメイン検索窓を開く。そこで最初に突きつけられるのが「.comは取れない」という現実だ。
.comの引力は絶大である。投資家もユーザーも、無意識に.comを前提としている。しかし、希望する名前の.comが数万ドルで売りに出されているなら、シード期のスタートアップには現実的な選択肢ではない。
ここで分岐が生まれる:
テック系なら .io か .dev — .ioはスタートアップの事実上の標準となったが、チャゴス諸島の主権移転という地政学リスクを抱える。一方、.devはGoogleが管理し、HTTPS必須で安全性のシグナルを送る。ただし「開発者向け」の印象が強く、B2Cプロダクトには不向きな場合がある。
AI企業なら .ai — 最も明快なシグナル。ただし年間$100〜$150の更新費用は、他のTLDの数倍。AIバブルが収束した際のリブランディングリスクも視野に入れるべきだ。
モバイルアプリなら .app — HTTPS必須のGoogle管理TLD。App Storeとの親和性が高く、アプリのランディングページとして最適。cash.appやbsky.appが成功事例として挙げられる。
成長後の.com移行を前提にするか? — これは戦略の分水嶺である。NotionはNotion.soからnotion.comへ、DropはDrop.coからdrop.comへ移行した。最初から移行を見据えるなら、ブランド名自体を短く保ち、将来の.com取得コストを織り込んでおくのが賢明だ。
シード期の判断基準をまとめると:
- .comが$5,000以下で取れるなら — 迷わず.com
- .comが高額 + テック企業なら — .devを第一候補に(.ioは地政学リスクを理解した上で)
- AI特化なら — .aiでシグナルを最大化、ただしコスト注意
- モバイルファーストなら — .appを検討
ドメインはスタートアップの最初の「パブリックな意思表示」である。その4文字が伝えるメッセージは、想像以上に長く残る。