文化観察
EC帝国の領土争い——.shopと.storeの棲み分け
2016年以降、EC(電子商取引)を意識した新gTLDが相次いで登場した。.shop、.store、.online、.site——いずれも「ここで買い物ができます」というシグナルを発するドメインだ。しかし、これらが.comからEC市場のシェアを奪えたかといえば、答えは厳しい。
.shopはGMOレジストリ(日本)が運営しており、日本国内では一定の存在感を持つ。GMOのドメイン販売網との相乗効果で、日本のEC事業者への浸透率は他のEC系gTLDより高い。一方、.storeと.onlineはインドのRadix社が運営し、グローバル市場での競争を展開しているが、いずれも「知る人ぞ知る」域を出ていない。
根本的な問題は、EC利用者がドメインからサイトにアクセスする時代ではなくなったことにある。検索エンジン、SNSリンク、アプリ——導線の多様化により、「ドメイン名でECサイトの性質を示す」必要性自体が薄れている。
EC系gTLDは、ドメインが「住所」として機能していた時代の発想で設計された、ポスト住所時代の製品と言える。生態系における「ニッチの不在」——環境が変わり、適応すべき生息地そのものが消えつつある事例である。